自衛隊の定年退職年齢は、階級によって差があることをご存知ですか?
普通のサラリーマンの定年が65歳ですが、自衛隊ではほとんどの自衛官が50代半ばで退官…、つまり退職となります。
自衛隊は特殊な仕事ですから、高齢になる前に退職しなければならないのでしょう。
そこで今回は、自衛隊の定年年齢を階級別にご紹介していきます。
さらに定年退職後に貰える退職金や年金、自衛隊退職後の再就職についても少し触れていきますね。
自衛隊の定年退職、その年齢は階級によって違う
自衛隊では様々な階級があります。
一般的な会社であれば役職によって定年年齢が変わるということはないのですが、自衛隊に限っては階級によって定められている定年年齢に差があります。
自衛官の階級と定年年齢(2020年~)
階級 | 定年年齢 |
将 | 60歳 |
将補 | |
1佐 | 56歳(2021年~57歳) |
2佐 | 55歳(2021年~56歳) |
3佐 | |
1尉 | 55歳(2021年~56歳) |
2尉 | |
3尉 | |
准尉 | |
曹長 | |
1曹 | |
2曹 | 53歳(2022年~54歳) |
3曹 | |
士長 | ― |
1士 | |
2士 | |
3士 |
※医師、歯科医師、薬剤師である自衛官や、音楽隊の自衛官は、階級にかかわらず定年は60歳と定められています。
ほとんどの自衛官は50代半と早い年齢で退職する
幹部自衛官でも2佐までの自衛官は50代半ばで定年となります。
また、幹部ではない一般の自衛官でも早い人なら53歳(2022年~54歳)で定年となります。
また、士階級の定年が無いのは、これは任期制自衛官だからです。
2年~3年の任期が終えたら年齢にかかわらず退職をします。
自衛隊退職後は再就職は必須
ほとんどの自衛官は50代半ばで退職しますので、年金受給開始年齢の65歳までかなり間が空いてしまいます。
退職時の年齢が53歳だとしたら、年金受給までの期間は12年もあります。
その為、定年退職をした自衛官は再就職が必須となっているのです。
退職自衛官の再就職先はどんなものがある?
退職自衛官の再就職先は、定年退職か、任期満了退職かによって違いがあります。
任期満了で退職した若い自衛官であれば、様々な再就職先がありますが、50代を迎えた自衛官の再就職先は限られています。
自衛官の再就職先として多いのが、警備・運送・介護などです。
特に前職が自衛官ということもあり、警備の仕事は引く手あまただそうです。
他にも自衛隊在職中に取得した資格を生かして、専門職の再就職先へ行く人もいます。
9割の自衛官には天下りは縁がない
自衛官は国家公務員になりますが、公務員の再就職先と聞くと「天下り」をイメージする人も多いと思います。
この天下りは、9割の自衛官には縁はありません。
というのも、天下りできるようなスキルと人脈を持つ人というのは、1佐以上の高級幹部になります。
1佐というのは、駐屯司令をやったり連隊長をやったりするような、とにかく一般自衛官からは雲の上の人です。
そんな人でないと天下りというのは縁がありません。
ほとんどの自衛官は、まじめに再就職先を探します。
自衛官は就職援護室で再就職先の斡旋が受けられる
とはいえ、自衛官は定年年齢が早いので自衛隊でも再就職を援護する取り組みがあります。
就職援護と呼ばれていますが、民間企業からの求人を退職自衛官に斡旋するのです。
自衛隊に集まる求人は基本的に自衛官を欲しているわけですから、退職予定自衛官にもぴったりの仕事が簡単に見つかるわけです。
主に警備や運送の仕事が多いのですが、自衛隊退職後は気楽な仕事がしたいという人も多く、こういった仕事を喜んで受け入れる自衛官も多数います。
もちろん、自分でやりたい仕事を探して、自分で転職活動をする人もいます。
ほとんどの場合は自衛隊在職中よりも給料は下がりますが、それでも普通の会社員と比べると、再就職に関してはかなり有利になる…といっても過言ではありません。
1尉以下の自衛官の再就職先の例
定年年齢が近い1尉~3曹までの自衛官は、再就職先もほぼ似たような感じになります。
多いのが警備、ドライバー、介護ですね。
警備と一口にいっても、工事現場からショッピングモール、病院など、勤務地や仕事環境は様々です。
また、ドライバーの場合は大型免許や大特免許を持っていると比較的、収入の良い仕事を得ることが多いようです。
介護現場は体力を使いますし、精神力も強い人でないと務まりません。その点、自衛隊出身者は体力的にも精神的にもタフな人が多いので介護の現場では重宝されます。
3佐以上の幹部自衛官の再就職先の例
幹部自衛官といっても、1佐以上は高級幹部、それ以下は普通の幹部です。
2佐~3佐の場合は、再就職先といえば地元の企業の役職付きになることが多いようです。
こちらの記事でも定年退職した幹部自衛官の体験談を載せているのでぜひ参考にしてください
また、1佐以上の高級幹部ともなれば、大企業の顧問だったり、大学や県といった公的機関で重要ポストについたりもします。
いわゆる天下りと呼ばれるものです。
年収も自衛隊在職中と同等かそれ以上という場合もあります。
ただし、こういうところへ再就職をする場合は、強い人脈がなければいけません。
こういう事は自衛隊在職中に様々な企業や役職の人間と仕事をしなければ培われないので、まず一般の自衛官には天下りは無理だと思ったほうがいいでしょう。
幹部自衛官の再就職先については、こちらの記事も参考にしてみてくださいね。
自衛隊の退職金と年金で老後は暮らせるか?
自衛隊を定年退職すると退職金がもらえます。
また、65歳からは年金の支給が始まりますの。
よほどのことが無い限り、退職金と年金で老後の生活は心配はありません。
ただ、この先、年金の支給率が下がったり、自衛隊の退職金が減っていく可能性は十分あります。
まずは自衛隊を退職するとどれくらいの退職金がもらえるのかをチェックしておきましょう。
自衛隊の定年退職でもらえる退職金
自衛隊の退職金は勤続年数によって金額が変わってきます。
自衛隊の退職金の計算は次のとおりです。
退職金=(退職日の給料月額×支給率)+調整額
つまり、退職の時点でどの階級にいて、そのときの月額給与がいくらかによって個人差があるのです。
また支給率は勤続年数の長さによって数値が変わります。
参考までに現時点での支給率を掲載しておきます。
自衛隊の退職金の支給率について
勤続年数25年 | 34.6倍 |
勤続年数26年 | 36.1倍 |
勤続年数27年 | 37.7倍 |
勤続年数28年 | 39.2倍 |
勤続年数29年 | 40.8倍 |
勤続年数30年 | 42.4倍 |
勤続年数31年 | 44倍 |
勤続年数32年 | 45倍 |
勤続年数33年 | 47.1倍 |
勤続年数34年 | 49.7倍 |
勤続年数35年~ | 49.59倍 |
自衛隊の退職金の階級別調整額について
退職金の計算には、各階級ごとに下記の調整額をプラスします。
階級 | 調整額 |
---|---|
2曹以下 | 0 |
1曹~2尉 | 1,002,000 |
1尉 | 1,251,000 |
3佐 | 1,500,000 |
2佐 | 2,001,000 |
1佐 | 2,502,000 |
1佐 | 2,751,000 |
将補、1佐 | 3,000,000 |
総理大臣が定める将補 | 3,249,000 |
将(5号俸以下)
将補(一) |
3,750,000 |
将(6号俸以上) | 4,752,000 |
高卒後18歳で自衛隊に入隊し54歳で定年した場合の退職金
高卒後すぐに自衛隊に入隊し、定年時に曹長だった場合。
勤続年数は36年。
つまり支給率は49.59倍になります。
この倍率を退職時の俸給額に掛けると、退職金の基本額が算出されます。
さらにこの金額に階級別の調整額1,002,000円をプラスします。
仮に退職時の俸給額が388,800だったとした場合…。
(退職日の給料月額×支給率)+調整額=退職金
↓
(388,800×49.59)+1,002,000=20,282,592円
高卒18歳入隊、退職時曹長の人の退職金は、約2000万円ですね。
※退職時の俸給額によっては上記の計算の限りではありませんので、あしからず。
自衛隊の若年給付金とは?
実は自衛隊には「若年給付金」という制度があります。
若年定年退職者給付金(じゃくねんていねんたいしょくしゃきゅうふきん)[1]とは、若年で定年退職する自衛官に対し支給される給付金のこと。
通常自衛官は54歳・55歳で定年するので、そのことにより受ける所得上の不利益を軽減することが目的で支給される。
この制度は、1990年(平成2年)に、それまでは定年直後から受給できた共済年金の特例が廃止されたことに伴い創設された。
自衛官の場合は50代で定年退職になるので、年金受給まで間があいてしまいます。
それをカバーするのが若年給付金です。
若年給付金は年に2回給付されます。
- 10月から3月に退職した方は4月に給付
- 4月から9月に退職した方は10月に給付。
この給付が1回目となります。
2回目の給付は退職から2年経過した翌々年の8月になります。
とはいっても、若年給付金の金額は自衛隊在職中の給料と比べて大した金額ではありません。
ほとんどの自衛官が再就職をしますので、再就職先の給料と若年給付金を合わせれば、それなりに生活できるという仕組みになっています。
ちなみに、若年給付金がいくらもらえるかの計算は、こちらのサイトが参考になります。
自衛隊退職後は退職金と年金があれば安泰?
自衛隊の退職金が2000万もあれば、あとは年金もあわせれば苦しくない生活ができそうですね。
ただし、退職金で家のローンを返済しようとしたりすると、あっという間に退職金は減っていきます。
また、自衛官は20代の早い段階から家を建てる人も多いのですが、定年時にはリフォームが必要になり、その資金を退職金から捻出する…といったケースもあります。
どちらにせよ、退職金は生活費などには使わず、何かあったときの資金として考えておいたほうがよさそうです。
生活費は再就職先の給料や年金で賄えるように、生活レベルを落としていく必要もありますね。
そして再就職をした場合でも60歳~65歳でまた定年です。
自衛隊を退職しても、生涯現役で働きたいという人の場合は、定年のない仕事か自営業で商売をするのもいいかもしれませんね。
その場合は、何かしらの資格や免許を持っていることが必要条件となります。
自衛隊退職の前後に必要な資格を調べて取得に向けて勉強をしておきましょう。
定年後の再就職で人気の仕事
多くのサラリーマンは、定年したあとも何かしら仕事を求める人が多いです。
年金だけでは生活ができないといった人が多いのも理由でしょう。
自衛官も退職金が多いからといって、他人事ではありません。
そこで、定年後の再就職で人気の仕事を少しご紹介しておきます。
1位 軽作業(梱包・仕分け)
2位 事務・入力・受付
3位 専門職
4位 清掃
5位 警備員
6位 配送・物流・ドライバー
7位 講師・インストラクター
8位 医療・福祉・介護
9位 スーパーマーケット
10位 厨房・キッチン・調理スタッフ
自衛隊出身者であれば、警備やドライバーなどの仕事はすぐに見つかる可能性が高いです。
こういった仕事はシフト制の場合が多く、自分の都合の良い時間に働けるとあって、定年退職者には人気の仕事になります。
ぜひ参考にしておいてくださいね。
つまり、自衛官は定年後の準備を早めにしたほうが良い
いかがでしたでしょうか?
自衛隊は定年年齢が50代とかなり早めですよね。
退職金は勤続年数や階級によって変わってきますが、だいたい2000万円前後はもらえると思います。
また、再就職先もある程度は自衛隊から斡旋してもらえるので、これも普通の会社員よりは有利だと思います。
ただ、やっぱり資格を持っていると、好待遇の再就職先を見つけやすくなります。
そのためめには、資格取得の勉強を早く始めた方が良いでしょうね。
自衛隊在職中の30代・40代のうちに資格を持っておくと、自衛隊以外の新たなキャリアに繋がる可能性もあります。
また、定年間近の50代の自衛官でも、普通の会社員とは若い年齢で第二の人生を送れるわけですから、人よりスタートが早い分、再就職も有利に働きますよ!
定年後を楽しく過ごすためにも、再就職の準備は今すぐに始めたほうがよいですよ!
最後に、再就職に役立つ資格講座の一覧が見れるサイトをご紹介します。
どんな資格があるかチェックしましょう!